正月には日本人なら必ず食べると言ってもいいくらいの食べ物【餅】
餅の歴史は古く、古墳時代の六世紀後半頃には餅を蒸す土器が発見されており、日本人となじみの深い食べ物という事がわかります。
しかし正月に餅を喉に詰まらせる事故は毎年多く、東京消防庁管内救急搬送データによると餅や団子等による窒息事故で救急搬送された人数は、平成20年~平成24年までの5年間で608人。
1年あたり120人もいる事に驚きますが、厚生労働省が統計によると『不慮の窒息』による死亡者数は、毎年1月が最多でその次が12月。
また1月の死亡者数の約90%は高齢者で、窒息事故の原因が食べ物による窒息という高齢者は、40%を超えているそうです。
欧米でも『日本はMOCHIという食べ物で人が死ぬらしい』といわれ、『日本人は寿司と同じ。なんでも一口で食べたがるようだ』と不思議に思われているとか。
そこで、餅による窒息事故を避けるポイントを調べてみました。
餅はその特性で、人の体温に近い40℃以下になってしまうと固くなってしまいます。
焼いたり雑煮に入れたり、例え熱々に調理されても低い室温や口に入れることによって、体温より低い温度になると硬くなり、口の中や喉の粘膜などにくっつきやすくなります。
このため気道の入り口に餅がくっついてしまい、もし剥がれない場合、窒息につながることもあります。
また口腔内や喉といった機能は、年齢を重ねるごとに変化していくことを忘れてはイケマセン。
そして虫歯や入れ歯によって、歯が抜けたり、歯の本数が少なくなってくると、噛む機能も低下し、これにより唾液の分泌量も減ってしまい食べ物が飲み込みにくい状態になり、これが窒息にもつながるという指摘もあります。
つまり餅が硬くなり、喉にくっつきやすくなる特性に加え、高齢者の食べ物を飲みこもうとする機能が低下するので、高齢者の餅の窒息事故が非常に多くなっているという事がわかりますね。
しかしこれは高齢者に限った事ではなく、噛んだり飲み込む機能が未発達の幼児や子供も要注意。
さらに大人といってもドライマウスなどの症状がある人などは、餅を食べるときにも十分注意しなければイケマセンね。

【餅を詰まらせないポイント】
では餅をのどに詰まらせないためには、どうすればよいのか?
帝京大学医学部附属病院救命救急センター長の坂本哲也主任教授はこのことについて3つのポイントを指摘しています。
坂本教授によると、高齢者が餅を詰まらせやすい理由について、
▽もともと餅が好きなので、餅を食べる機会が多い
▽年齢を重ねる事による喉の機能低下で、詰まると吐き出しにくくなる。
▽認知症や物忘れが激しい場合は、餅が大きな塊の状態で、飲み込むんでしまう。
という理由を挙げています。
この対策法として、
☆餅を小さくする。
☆雑煮やおしることいった、できるだけ水分を多く含む状態にして食べる。
☆特に高齢者が餅を食べる時などは、ひとりで食べさせないようにして、家族、周囲の人が目を離さないようにする。
これにより餅を喉に詰まらせる事故の確率が低下するとしています。
【詰まらせた場合は?】
では、万が一、餅が喉に詰まってしまったらどうすればよいのでしょうか?
まず119番通報をする事が大事です。
そしてその間、以下の応急手当を試してみましょう。
▽詰まらせた人が意識がある間は、せきや吐き出すように促してみる。
▽もし吐き出すことができなければ、手のひらの付け根部分で、相手の背中を痛いと思うくらいに強く叩いてみる。
▽意識が無くなり、倒れてしまった場合は、救急車が来るまでの間に手で胸の中央付近を5cmくらい沈み込ませるくらいの力で押す。
(バスケットボールなどを5cmくらいへこませる感じで。力が無い女性でも全体重を乗せるくらい)
(よく覚えていなくてもためらわずに1秒間に1回以上、1分間に100回ほどを目安に心臓マッサージと同じ動きで押し続ける)
以上が坂本教授のアドバイスです。
この事故を高齢者の事故と考えず、若い人でもありうる事故を考え、めでたい正月を笑顔で過ごしたいですね。